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マダニ刺症① 四街道でもマダニに刺されます!



今年の夏、「自宅の庭で草むしりをしていたらこんなことになった」とのことで市内の患者様が来院されました。

マダニ刺症201608-1

診察したところ「マダニ」に刺された状態でした。黒っぽい突起物に見えるので、「急にホクロができた!」といって来院される方が多いですね。

マダニは口器を皮膚に差し込んで、さらに唾液に含まれるセメント様物質で口器を皮膚内にガッチリ固定させた後、数日間かけて血を吸い続けます。

過去記事「マダニが媒介する各疾患」でも書いたように、マダニは各種病原菌を媒介して人に感染させる危険性を有している虫です。

<マダニによる感染症、および各疾患の原因病原体>
重症熱性血小板減少症候群(SFTS):ウイルス
ライム病:細菌(スピロヘータ)
日本紅斑熱:細菌(リケッチア)

このうち最も注意しなくてはならないのが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」です。

NIID 国立感染症研究所によると、2013年以降に発生したSFTS(2016-09-28現在)は215例、そのうち死亡例が48例です。死亡率22%という高さです!

まだ関東でのSFTS発生例はありませんが、石川県〜沖縄県にかけて分布範囲が広がっています。

このような感染症を引き起こす可能性があるため、マダニに刺された場合は適切に処理しなくてはなりません。セメント様物質で固定されてるため簡単には取ることができず、不用意に虫体に力をかけて圧迫すると体液が逆流して感染症のリスクが高まります。また、無理矢理虫体を引きちぎると口器が皮膚内に残存し、これもまた感染症の原因となります。

マダニ刺症201608-2

この様な理由から、治療には「刺入部を含めた皮膚切除による虫体の完全摘出」が必要となります。

皮膚科には生検用医療器具として上の写真のような「生検トレパン(画像は製造販売元のカイインダストリー(株)WEBサイトより拝借しました。)」などがあります。局所麻酔をして、生検トレパンで皮膚をくり抜いて、2〜3針縫えばOKです。

今回はマダニも含めてくり抜き、虫体ごと病理検査に提出しました。

マダニ刺症201608-3

病理組織標本です。口器の刺入部に一致して、皮膚潰瘍が認められました。また真皮内にはリンパ球、好酸球を主体とする炎症性細胞浸潤があり、マダニ刺症に一致する変化を確認できました。

マダニ刺症201608-4

マダニ虫体の拡大像です。マダニの断面は私自身も初めて見ました。虫の臓器についてはよく分かりませんが、頭と反対側(写真左側)に赤血球の塊と思われる部位があるので、吸血した後はここに溜めるのでしょうね。

摘出治療後にはマダニが媒介する病原細菌に効く抗生剤を内服していただきながら、経過観察します。抜糸後、感染症の徴候がなければ、通院は終了となります。

NIID 国立感染症研究所からはマダニ刺症予防のためのパンフレット「マダニ対策、今できること」が公表されています。関心のある方は、ぜひご覧ください。



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