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先天性のホクロには液体窒素による冷凍療法が有効!



今回はホクロの治療について解説します。その中でもネット上にも情報量の少ない「生まれつきのほくろ(先天性)の治療方法」については、臨床写真も提示しつつ紹介致します。

まずはほくろ(黒子)の基礎知識からです。皮膚科専門医がほくろと呼ぶ病変の正式名称は、「色素細胞母斑」です。「メラニン色素を産生する色素細胞が、皮膚内で異常に増殖してできた母斑(あざ)」という意味です。色素細胞母斑という名称以外にも、「母斑細胞母斑」や「色素性母斑」と呼ばれることもあります。

ほくろには「生まれつきのもの(先天性)」と「生まれた後に現れてきたもの(後天性)」があります。先天性と後天性で分ける意味としては、「治療方法」と「予後(よご)」に差があるからです。

【大きさ】
・先天性:大きい(15mm以上のことが多い)
・後天性:小さい(15mm未満のことが多い)

【深さ】
・先天性:深い(表皮〜真皮全層(場合によっては皮下脂肪織内まで))
・後天性:浅い(表皮〜真皮中層)

【予後】
・先天性:良好(20cmを超える「巨大型」では、数%の確率で成人後に悪性黒色種を合併することがあるため要注意)
・後天性:良好

「先天性のほくろ(後天性のほくろに比べ大きくて深い)」の場合、治療の第一選択は「手術による切除」です。「後天性のほくろ(先天性のほくろに比べ小さくて浅い)」の場合、治療の第一選択は「レーザー治療による蒸散(炭酸ガスレーザー、エルビウムヤグレーザーなど)」です。

もちろん治療方法は様々な条件と患者様のご要望を加味して決められるため、先天性のほくろにレーザー治療(蒸散)、後天性のほくろに手術という選択もあります。

しかし、「先天性のほくろをレーザー治療で蒸散させる」と考えた場合、「深い」という要素は「削っても削っても病変を取りきれない可能性がある」ことにつながります。レーザー治療(蒸散)であまりにも深く削ると、最終的に目立つ傷跡(瘢痕、もしくは肥厚性瘢痕)を残してしまうため、削れる深さにも限界があります。その限界以上の深さに病変があるケースでは、前述のように「レーザー治療(蒸散)を受けたけれども取りきれない」という結論に至ってしまいます。

同様に、「大きい」という要素は、レーザー治療(蒸散)に期待される「きれいに仕上がる」が実現されず、「予想していた以上に仕上がりが良くない」という結果につながる可能性があります。後天性のほくろに対して「レーザー治療による蒸散(炭酸ガスレーザー、エルビウムヤグレーザーなど)」を行った際に、治療部位が「正常皮膚に近い状態にまで回復する」のは治療範囲が狭いからです。自分自身の経験上、直径5mm以下のレーザー治療(蒸散)はかなり深くまで削ってもきれいに治ります。直径1cmまでなら何とか大丈夫、それ以上だとかなり慎重に行います。先天性のほくろの場合、直径5cm以上のケースも多々ありますので、そうなるとどうしてもレーザー治療(蒸散)は勧めにくくなります。

以上の点より、当院では「先天性のほくろに対する治療方法は手術」を基本方針としています。

ただし、例外があります。それは「乳児(1歳未満)の先天性のほくろ」です。このようなケースでは「液体窒素による冷凍療法」がとても有効です(20cmを超える巨大型は対象外です)。液体窒素による冷凍療法とは「表皮〜真皮浅層」に作用し、その部分を壊死させて取り除くための治療方法です。通常、ウイルス性のイボや皮膚良性腫瘍を除去するために用いられます。

なぜ「乳児(1歳未満)」が対象かといいますと、乳児の皮膚が「薄い」からです。皮膚が薄いということは、先天性のほくろの「厚みが少ない」ということになり、治療によって取りきれる可能性が高まります。もう1点は「皮膚の再生力が高い」からです。いわゆる治療痕というものが、非常に残りにくいのも乳児皮膚の特徴です。

次に、なぜレーザー治療(蒸散)ではなく「液体窒素による冷凍療法」なのかについてですが、1つ目は「レーザー治療(蒸散)と違い、注射による麻酔が不要」であることです。受けたことのある方はご存知かと思いますが、皮膚への局所麻酔は結構な痛みとなります。2つ目は「液体窒素による冷凍療法は、繰り返し施術しても治療後に傷が残りにくい」ためです。あくまでも強く施術しすぎなければですが、傷の残りにくさはレーザー治療と同等、もしくはそれ以上です。

今回ご紹介する臨床写真は、当院にて「液体窒素による冷凍療法」を受けていただいた「先天性のほくろ」の患者様です。WEBサイト掲載へのご協力ありがとうございます。

生まれつき(先天性)のほくろに対する冷凍療法(液体窒素)1

生まれつき(先天性)のほくろに対する冷凍療法(液体窒素)2

この患者様は生後5ヶ月目に第1回目の治療を行いました。治療回数は合計4回で、最終治療日は生後1才6ヶ月目です。治療後の写真は最終治療日から4ヶ月目のものであり、非常にきれいな仕上がりとなっています。

「液体窒素による冷凍療法」の対象を「乳児(1歳未満)の先天性のほくろ」と表現しているのは、可能な限り早く来院していただきたいからです。今回の患者様のように、最終治療日が1歳を超えても問題はないのですが、「初回〜第3回目くらいまでを1歳になる前に受けていただきたい」という思いが込められています。

「生まれつきのほくろ(先天性)」の治療をご希望の際には、是非早めにご来院ください。よろしくお願いします。



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