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ピコ秒レーザー・PicoWayと応力緩和時間



先日、「PicoWay 薬事承認記念セミナー 日本の名医に聞く! In 東京」に参加してきました。講師はレーザー治療に造詣が深い「みやた形成外科・皮ふクリニック院長 宮田成章先生」でした。

PicoWay セミナー

ナノ秒レーザー(Qスイッチレーザー)よりも更に短時間照射が可能な機器としての「ピコ秒レーザー」。このタイプのレーザーが登場してからすでに数年が経過しました。発売当初から「刺青(いれずみ)にはQスイッチレーザーよりもピコ秒レーザーが有効」と言われており、Before-Afterの臨床写真を見てもその通りだと思っていました。しかし、「刺青治療以外にどの様な優位性がピコ秒レーザーにあるのか?」という点について、自分自身の中では漠然とした状態であったため、最新の知見を得て頭の中を整理したいと考え、参加した次第です。

講演中、宮田先生が最も強調されていたのが、パルス幅の極端な差から生じる「レーザー光による作用機序の違い」でした(現在のピコ秒レーザーの治療対象物が「メラニン色素」と「刺青の色素」のため、以下の文中に出てくる「生体内色素」とはこの両者を指します)。

ナノ秒レーザーのナノ秒(ns)とは「10億分の1秒」という単位であり、ピコ秒(ps)とは「nsの更に1000分の1秒」という想像を絶する世界です。ns単位で照射されたレーザー光は、生体内色素に反応すると「光熱作用」を生じます。言い換えると、「レーザーのエネルギーが熱に変わり、その熱が生体内色素に作用する」というメカニズムです。ps単位で照射されたレーザー光の場合は、光熱作用ではなく「光音響作用」を生じます。これは「レーザーのエネルギーが衝撃波に変わり、その衝撃波が生体内色素に作用する」といった様に、nsとpsでは大きな違いがあります。

セミナーでは具体例として、生体内色素を「岩」に置き換えて考えてみた場合、nsによる光熱作用は「岩を叩き砕いて、いくつかのブロックに分割するイメージ」、psによる光音響作用は「岩を粉々に砕いて、小石レベルに細分化するイメージ」とのことでした。生体内色素を細かくすればするほど、貪食細胞により「お掃除」されやすくなります。刺青の治療でピコ秒レーザーが優位というデータは、この様な理由で説明することができます。

ns対psの「パルス幅の極端な差から生じるレーザー光による作用機序の違い」は大変興味深いですが、全てのピコ秒レーザー機器が光音響作用を効果的に活用できているわけではありません。

光音響作用を発揮させるには、「生体内色素の応力緩和時間(370ps)」内でレーザー照射を完了させなくてはなりません。つまりレーザー機器のパルス幅が370ps以下に収まっている必要があるということです。パルス幅が長くなればなるほど、光音響作用ではなく、光熱作用が中心となってくるからです。光熱作用しか得られないのであれば、ナノ秒レーザー(Qスイッチレーザー)と比較した場合に、効果に差が出なくなってしまいます。

現在日本国内で主に流通しているピコ秒レーザー機器は3種類ありますが、パルス幅が生体内色素の応力緩和時間(370ps)内に収まっている機器は、シネロン・キャンデラ社製のPicoWayのみとなっています。PicoWayのパルス幅はKTP(532nm)が294ps、Nd:YAG(1064nm)が339psです。

実はピコ秒レーザーの特性を活かして、ある病気の治療ができないかと考えています。近日中にPicoWayを借りて試用する予定です。予想通りに効果的な治療ができれば、導入について前向きに検討したいと思っています。



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