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デュピクセント治療まとめ①(9ヶ月間・29名)【患者背景】



デュピクセントとはアトピー性皮膚炎(以下、AD)をコントロールするために開発された注射薬です。

2018年7月から始まった当院でのデュピクセント治療が、ある一定期間経過したため今回まとめてみました。今後治療を受けるかどうか検討されている患者様のご参考になれば幸いです。

【治療期間】
2018年7月から2019年3月までの9ヶ月間

【治療患者総数】
29名

【治療開始時期(各3ヶ月間)】
2018年7月〜9月:6名
2018年10月〜12月:15名
2019年1月〜3月:8名

デュピクセントの国内発売が2018年4月、当院での治療開始がその3ヶ月後である2018年7月と比較的早期だったため、非常に多くの患者様にご来院いただけたのだと思います。

【男女比】
男性:女性=20:9

当院でデュピクセント治療を受けている患者様は、圧倒的に男性が多いですね。女性の2倍以上となっています。

そもそも「成人における中等症〜重症のAD患者様は男性に多い」という経験上のイメージはありましたが、この男女比はそれに合致するものです。これは「成人男性はAD治療よりも仕事を優先しがちで、ADコントロールがうまくいかないことが多いからだ」と短絡的には決め付けられないと思います。当院でデュピクセント治療を受けていただいている男性患者様が熱心に通院加療されている点からも、そう感じています。

ADは体質もさることながら、その他の複合的な要素が絡み合って悪化する病気です。それら要素は避けられるもの、避けられないもの様々です。悪化要素が複数重なってしまうとどうしてもADは重症化してしまい、基本的治療(抗アレルギー剤内服、ステロイド剤外用、タクロリムス剤外用など)でのコントロールが難しくなってしまいます。

基本的治療に加えるとなると、まずは光線療法(当院でもナローバンドUVB全身照射器を使用しています)ですが、週1〜2回来院するのは患者様にとって結構な負担です。それ以外には副腎皮質ステロイド剤内服、免疫抑制剤内服もありますが、どちらも副作用を回避するという点から長期的に継続することができません。

このような現状において、デュピクセントは重症AD患者様にとって光明をもたらしていると言えます。国際誕生が2017年3月なので、世界各国で長期間使用されてから国内導入された薬剤ではありません。そのため5年、10年といった長期的使用経験が人類にないわけですから確実なことは誰にも分かりませんが、治験中、および発売後の副作用調査において、重大な副作用は発生していません。デュピクセントの効果は非常に高く、多くの患者様のQOL(quality of life)を劇的に向上させるため、本薬剤が長期に渡って継続使用できることを切に願っています。

【平均年齢】
36歳

【年齢分布】
10歳代:2名
20歳代:5名
30歳代:11名
40歳代:7名
50歳代:4名

年齢分布を見ると30〜40歳代に最も多く、平均年齢もそれを反映しています。10〜20歳代にデュピクセント治療を受けているAD患者様の数が少ないのは、下記の過去記事にも書きましたが、「まずは基本的治療を見直し、再挑戦してみましょう! それでもうまくいかなければ、デュピクセントを検討しましょう!」と勧めているからでもあります。10〜20歳代の患者様はこの方針でデュピクセントを回避できるケースが多いですね。

■過去記事
デュピクセント注射後の経過、適用外だった方々の経過

【住居地(千葉県内24名)】
四街道市:3名
千葉市:11名
佐倉市:2名
成田市:1名
市原市:1名
木更津市:1名
銚子市:1名
船橋市:1名
習志野市:1名
浦安市:2名

【住居地(県外5名)】
東京都:2名
茨城県:2名
栃木県:1名

29名の中で元々当院に通院されていた患者様は2名(四街道市1名、千葉市1名)のみであり、残りの27名はデュピクセント治療希望のために新患として来院されました。

当院における2019年3月の統計において、AD患者様は約250名でした。デュピクセント治療のために通院されている患者様を除いても約220名です。既存のAD患者様としてざっくり考えると、「デュピクセントは不要:同薬剤が必要=220:2」ですから、1%未満という数字です。つまりほとんどのAD患者様にとってデュピクセントまでは必要ないということです。

しかしながら四街道市外、および千葉県外からこれだけ多くのAD患者様が通院されているということは、「絶対的な数は少ないものの、デュピクセントを必要としている重症AD患者様は必ずいる」ということでもあります。

デュピクセント治療を受けている患者様の中に、わざわざ栃木県から通院されている方がいらっしゃいます。片道3時間半かかるそうです。「何も埼玉、東京を越えて千葉までいらっしゃらなくてもいいのではないですか?」と伺いましたが、「自分が検討した医療機関では、すぐにデュピクセントを打ってもらえないことが分かったので」というお答えでした。

これまで「なぜ当院を選ばれたのですか?」と他の患者様にも伺ったことがあります。「まずは自分の医療機関で6ヶ月間治療を行い、それでも無効ならばデュピクセントを検討する」、「アナフィラキシーショックの可能性があるため、初回投与は入院して受けていただく」などと回答され、当該医療機関での治療を断念されたそうです。

デュピクセントを使用する場合は、厳しい条件をクリアする必要がありますので、当院でもその点については厳守しています。しかし「適用条件をクリアしていること」、および「患者様がデュピクセント治療を強く希望されていること」が確認できれば、当院ではすぐに準備して治療を開始しています(初診日から3〜7日後に初回投与を行なっています)。

患者様としては「一刻も早くデュピクセントを打ってほしい」というお気持ちだと思います。

【継続率】
100%

29名のうち4名の患者様は治療を終了、もしくは一時中断しています。「転居のため転院」、「留学のため一時中断」、「経過良好のためデュピクセント治療を終了し、現在は基本的治療のみで通院加療中」、「アレルギー性結膜炎合併のため一時中断。眼科にて治療中。略治後、デュピクセント再開予定」といった具合です。重要なのは「4名全員の現状を把握できている」ということです。

残りの25名の患者様は全員が「治療開始日から2019年3月までデュピクセント治療を継続している」という状態です。つまり継続率100%です。医療の世界においてこの継続率は極めて稀であり、20年以上医師をしている私自身にとっても初めての経験です。

通常はどんなに優れた治療であってもドロップアウト(脱落)する患者様が出てきます。医療者側から見ると「相談なく自己中断してしまうケース」です。ドロップアウト0名というのは驚異的です。

この事実から分かることは、「治療を受けているAD患者様にとってデュピクセントがかけがえのない存在となっている」、「デュピクセント治療を生活上の最優先事項としている」、「デュピクセント治療のBefore-Afterで体に劇的な変化が起こっており、良好な状態を失いたくない」ということだと思います。



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