デュピクセント注射後の経過、適用外だった方々の経過 | 松島皮膚科医院 | 千葉 四街道の皮膚科・美容皮膚科の専門医

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デュピクセント注射後の経過、適用外だった方々の経過



当院でアトピー性皮膚炎の新規治療薬(注射)である「デュピクセント」の取り扱いを開始してから2ヶ月間が経過しました。

デュピクセントの治療経過

この間にデュピクセント希望にて受診された方は8名でした。そのうち1名のみが当院でアトピー性皮膚炎の治療を受けていた患者様で、残り7名は当院アナウンスBlogの記事(下記)をご覧になり新規に来院された患者様でした。

【解説】デュピクセントの作用機序・効果・費用・助成制度

デュピクセントの適応となるのは「既存治療でアトピー性皮膚炎の病状のコントロールがどうしてもうまくいかない」というケースです。

当院では非常に多くのアトピー性皮膚炎の患者様を診察させていただいておりますが、それでもデュピクセントまで必要となった患者様が1名のみなので、一般的な皮膚科クリニックにおいて本薬剤を必要とするケースはそれほど多くないことが分かります。ほとんどのアトピー性皮膚炎患者様は既存治療(抗アレルギー剤、ステロイド外用剤、プロトピック軟膏、光線治療など)で病状のコントロールができているという状況です。

8名の内訳は、「6名がデュピクセントを併用開始」、および「2名が既存治療の見直しを優先する」となりました。

デュピクセントの併用を開始した患者様は、本日現在で以下のような治療ステップに到達されております。
■3名が3回目の投与完了
■3名が初回の投与完了

副作用に関しては、アナフィラキシーショックを含め発生しておりません。

効果については「素晴らしい!」の一言です。「こんなに効くのか・・・」と素直に感動しました。初回投与から2週間後に2回目投与で来院していただくのですが、その時点で皮膚の状態は大幅に改善しています。医師からは赤み(紅斑)、硬化(苔癬化)、ガサつき(鱗屑)、搔き壊し(掻破痕)という客観的な指標でしか改善を確認できませんが、患者様ご自身は「痒み(掻痒感)の軽減」を強く実感されるそうです。

アトピー性皮膚炎は強い痒みを伴う疾患です。「掻かないほうがいいのは分かっている。しかし掻かずにはいられない痒みがある」という病気なのです。

私自身は「アトピー性皮膚炎の悪化要素は50%以上が掻痒感」と考えています。つまり「体質・アレルギー・乾燥状態などが原因で皮膚炎を生じる」→「皮膚炎に伴う痒みが出るため、掻いてしまう」→「更に皮膚炎↑、掻痒感↑」→「更に掻いてしまう」→「より更に皮膚炎↑、掻痒感↑」→「より更に掻いてしまう」・・・、という悪循環に陥ってしまいます。

既存治療でどうしてもこの悪循環から抜け出せない場合、デュピクセントは非常に有用だと考えています。掻痒感が激減し、掻破行動がなくなれば、アトピー性皮膚炎は劇的に改善するからです。

デュピクセントの効果を私自身が最も良く認識できるのが、やはり長年当院に通院されている患者様(仮称:Aさん)です。Aさんはアトピー性皮膚炎における「病状コントロールの安全域」が非常に狭い方です。「安全域」という概念は私が独自に付けた名称であって、他の皮膚科医とこの点について議論したことはありませんが、皮膚科医であれば漠然とは感じていると思います。

ここでいう安全域とは「病状をこの範囲に収めておけばアトピー性皮膚炎のコントロールとしては合格」と考えられる幅のことです。病気の治療のために薬を強くすれば病状は改善しますが、その代わりに副作用が発生しやすくなります。かといって、弱い薬しか使わなければ、病状自体が改善しません。「この位の強さの薬を使っていれば、日常生活に影響なく過ごすことができる」という安全域がアトピー性皮膚炎患者様はそれぞれ違うわけですが、通常の場合はある程度安全域が広いため、ピンポイントで病状をコントロールする必要はありません。

しかし中には、かなりシビアなコントロールをしなければ病状が安定しない方がいらっしゃいます。そのような患者様は「安全域が狭い」ということになります。つまり「弱い薬ではアトピー性皮膚炎が全くコントロールできないが、薬を強くすると副作用が一気に出てしまう」ということです。どちらか一方に傾き過ぎると、あっという間にバランスを崩してしまうといったようなイメージです。Aさんは正にこのような方でした。

Aさんが2回目のデュピクセント注射(初回注射から2週間後)にて来院された際におっしゃった言葉がこちらです。

「新しい人生が開けそうです」

こんな言葉を患者様に言わせる薬は、そうそうあるものではありません。アトピー性皮膚炎の病状は劇的に改善していました。痒みのために皮膚を掻き、えぐり、その傷から細菌感染を繰り返し、ステロイド外用剤を度々中断せざるを得なかったというあの頃の症状はありませんでした。痒みがなくなったため、全く掻かなくなったと言っていました。

3回目のデュピクセント注射の際のコメントはこちらです。

「怖いくらいに効いています。20年前にこの薬ができていれば、私の人生は変わっていたと思います」

「Aさんの人生の中で重いアトピー性皮膚炎が及ぼした大きな影響は、私の想像を遥かに超えたものがあるのだろう」と再認識させられたと同時に、こんなにも晴れやかな笑顔で近況報告してくれるAさんを見ると、医者冥利に尽きるなと思いました。

デュピクセントによるアトピー性皮膚炎の治療について、当院では「まず4ヶ月間継続しましょう」と説明しています。これは治験結果において、投与開始から16週時(4ヶ月)に効果が安定し、各項目の評価ができるようになっているからです。その後については各患者様と相談の上、継続の可否や投与間隔の延長などについて検討していきたいと考えています。

現時点において私自身はデュピクセントを高く評価しています。ほとんどのアトピー性皮膚炎患者様にとっては必要のない薬剤ではありますが、一部の重症型の患者様には「人生の味方」とも言えるかけがえのない薬剤となる可能性があります。当院で本薬剤の投与を受けてらっしゃる患者様の多くは、市外、もしくは県外の方々です。将来的には、是非とも通院に便利な地元の医療機関で受けていただけるようになってほしいと思っています。

最後は「既存治療の見直しを優先する」こととなった2名のアトピー性皮膚炎の患者様についてです。お二人とも若い男性の方で、当院のアナウンスBlogをご覧になり来院されました。お二人ともデュピクセントを強く希望されておりましたが、どう見ても現在受けてらっしゃる治療内容と病状が合っていません。「後医は名医」という言葉もあるくらい後から診察する医師の方が有利なため、私は前医の診療内容を批判することをほとんどしませんが、流石にこのお二人の場合は「もうちょっと上手いやりようがあると思いますよ」と説明し、当院で再度治療することになりました。内容としては、一般的なステロイド外用剤と抗アレルギー内服薬です。

アトピー性皮膚炎の治療がうまくいっていない原因のほとんどは、以下のような問題によるものです。
■病状と薬の強さが合っていない(「炎症が強いのに弱い薬しか使っていない」というようなミスマッチ)
■必要な薬の量を塗っていない(多くの場合、薄く塗りすぎている)
■必要な回数を塗っていない(多くの場合、1日1回以下)
■定期的に通院できていない(生活の中でアトピー性皮膚炎治療の優先順位が低い)

このような点について説明をし、病状にあった薬剤を処方し、2週間後の再来予定としました。今後、もしデュピクセントを開始することになったとしても2週に1回の通院が必要となるため、治療意欲を判断させていただくという目的もありました。

お二人ともきちんと2週間後に来院していただけました。症状は劇的に改善していました。そして以下の会話となりました。

私 「デュピクセントは必要ないですよね」

患者様 「そうですね。要らないです」

お二人とも次回の再来は1ヶ月後としました。しばらく1ヶ月に1回ほど経過を観察し、安定したら2〜3ヶ月に1回の通院とする予定です。



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