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5.62021
新型コロナワクチン接種適否に関する皮膚科的見解
新型コロナウイルス(COVID-19)に対するワクチンに関して、日々お問い合わせが増えてきているため、「皮膚病をお持ちの患者様、および皮膚病の治療で投薬を受けている患者様」に向けて当院における皮膚科としての見解を示し、ご理解いただきたいと思い記事を投稿しました。
新型コロナウイルスに対するワクチンに関する情報はインターネット上で誰でも閲覧可能であり、今回の記事に関しては下記ページを参考にしました。
■新型コロナワクチンQ&A 「私は接種できますか?」
■新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ
■「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き(2.1版)」(令和3年4月16日)
新型コロナワクチンQ&A 「私は接種できますか?」を見ると、そのページの一番上に「Q. ワクチンを接種することができないのはどのような人ですか」とあります。その質問への回答は、以下の通りです。
A. 一般に、以下の方は、ワクチンを接種することができません。ご自身が当てはまると思われる方は、ワクチンを接種しても良いか、かかりつけ医にご相談ください。
・明らかに発熱している方(※1)
・重い急性疾患にかかっている方
・ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症(※2)の既往歴のある方
・上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある方(※1)明らかな発熱とは通常37.5℃以上を指します。ただし、37.5℃を下回る場合も平時の体温を鑑みて発熱と判断される場合はこの限りではありません。
(※2)アナフィラキシーや、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下等、アナフィラキシーを疑わせる複数の症状。
「明らかに発熱している方」や「重い急性疾患にかかっている方」とは体調不良と判断される状態であるため、新型コロナワクチンに限らず、どのワクチン接種においても不適切と判断される方々です。
「ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症の既往歴のある方」については、別のQ&A項目「Q. 海外では、アレルギーのある人は接種を受けていますか。アレルギーのある人は副反応が起きやすいのですか」で以下のような詳細な回答があります。
A. 米国CDCは、過去に新型コロナワクチンに対して重いアレルギー反応を起こした方や、同ワクチンに含まれる成分に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方への接種は推奨していません。
米国の疾病予防管理センター(CDC)は、他のワクチンや食べ物に対して、重いアレルギーのある方も、新型コロナワクチンの接種が可能としています。 一方、過去に新型コロナワクチン(mRNAワクチン)に対して、アナフィラキシーなど重いアレルギー反応を起こした方や、同ワクチンに含まれるポリエチレングリコール(PEG、※1)に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方への接種は推奨していません。PEGに似た構造を持つポリソルベート(※2)に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方への接種は、以前は禁忌とされていましたが、現在は、専門医による適切な評価と重度の過敏症発症時の十分な対応ができる体制のもとに限り考慮できるとされています(2021年3月3日時点)。
(※1、※2)ポリエチレングリコールは、一般に、病院で腸内検査をする際に用いる腸管洗浄剤の主成分であり、また、飲み薬や塗り薬、目薬等の添加物としても用いられます。医薬品以外では、ヘアケア製品や歯磨き粉等の医薬部外品に用いられており、保湿等を目的として化粧品にも含まれています。また、ポリソルベートは、医薬品の他、乳化剤などの食品添加物として様々な食品に用いられています。なお、こちらに記載した製品群以外の製品にも含有されている可能性があるため、ご心配の方はご使用されている製品の成分欄をご確認いただくか、かかりつけの医師にご相談ください。ただし、ポリエチレングリコールやポリソルベートを含む製品が原因でアレルギー反応を起こしても、必ずしもポリエチレングリコールまたはポリソルベートがアレルギー反応の原因とは限りません。
ここでの回答を要約すると、同ワクチンに含まれる成分に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方とは、「ポリエチレングリコールに対するアレルギー反応を有する方を指す(ポリソルベートは禁忌ではなくなっている)」ということです。この物質だけをピンポイントに指摘していますので、該当する方は極少数と思われます。
また、「他のワクチンや食べ物に対して、重いアレルギーのある方も、新型コロナワクチンの接種は可能」と明記されています。
患者様から高い頻度で「私はアレルギー性疾患(蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、花粉症など)を持っています。新型コロナワクチン接種は大丈夫でしょうか?」とお問い合わせいただきますが、これらは前述のごとく全く問題にならないということです。
次は「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き(2.1版)(令和3年4月16日)」を見てみましょう! この手引きの内容では、ワクチンの接種対象を4つのグループに分類しています。
【第1グループ】医療従事者、および新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する業務を行う者(救急隊員など)
【第2グループ】令和3年度中に65歳以上に達する者(昭和32年4月1日以前に生まれた者)
【第3グループ】基礎疾患を有する者、高齢者に接する業務を行う者
【第4グループ】第1グループ〜第3グループに該当しない者
【第3グループ】基礎疾患を有する者の詳細は、以下のように解説されています。
①以下に示す 1~13 の病気や状態の方で、通院/入院している方
1. 慢性の呼吸器の病気
2. 慢性の心臓病(高血圧を含む)
3. 慢性の腎臓病
4. 慢性の肝臓病(肝硬変等)
5. インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病又は他の病気を併発している糖尿病
6. 血液の病気(ただし、鉄欠乏性貧血を除く)
7. 免疫の機能が低下する病気(治療中の悪性腫瘍を含む)
8. ステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている
9. 免疫の異常に伴う神経疾患や神経筋疾患
10. 神経疾患や神経筋疾患が原因で身体の機能が衰えた状態(呼吸障害等)
11. 染色体異常
12. 重症心身障害(重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態)
13. 睡眠時無呼吸症候群
14. 重い精神疾患(精神疾患の治療のため入院している、精神障害者保健福祉手帳を所持している、又は自立支援医療(精神通院医療)で「重度かつ継続」に該当する場合)や知的障害(療育手帳を所持している場合)②基準(BMI 30 以上)を満たす肥満の方
※ 薬事承認の内容を踏まえ、一定の年齢以上の者を対象とする場合がある。
健常人(第4グループ)よりも「基礎疾患を有する者」を第3グループに分類して優先しているということは、「具合の悪い人ほど早く接種してください」という意味です。これはもちろん基礎疾患を有する方々が新型コロナウイルスに感染した際に重症化しやすいということであり、それを回避してほしいという厚労省の意思表示です。
「基礎疾患があって全身状態が悪化している人ほど早く接種してほしい」という新型コロナワクチンにおいて、皮膚病があるから接種できないということがあるでしょうか?
もちろんありません! 皮膚科で扱うどのような病気の方であろうと、皮膚科から処方されるどのような薬を内服・自己注射している方であろうと、新型コロナワクチンの接種は可能です。
ただし皮膚病でも「発熱を伴う感染症(帯状疱疹、丹毒、蜂窩織炎など)や炎症性疾患(重症薬疹、Sweet病(急性熱性好中球性皮膚症)など)」はあります。
しかし発熱というのは、大前提として「ワクチンを接種することができない条件(明らかに発熱している方、重い急性疾患にかかっている方)」に該当するため、そもそもワクチン接種不適合であり、皮膚病云々という話ではないのです(ワクチン前の予診の段階で接種不可とされます)。
まとめますと、「新型コロナワクチン接種において、皮膚病(アレルギー性疾患を含む)があること、また皮膚科からの内服薬や自己注射薬を使用していることは問題とならない(発熱を伴うケースを除く)」ということです。
当院における皮膚科的見解としてご理解いただけましたら、幸いです。
どうぞよろしくお願いします。
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