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陰嚢被角血管腫のレーザー治療による副作用とは?



患者様よりお問い合わせを頂きました。

陰嚢被角血管腫についておうかがいしたいのですが、他の病院で診てもらいましたが、レーザーで除去はできるがその部分の色素が抜けてかえって目立つようになる可能性が高いと言われました。

自分は数が多いので、「すべて除去すると陰嚢がパンダみたいになる」と言われ、とりあえず後日となりました。

上記のような状態になる可能性はどのくらいあるんでしょうか? すべての除去部分で色素が抜けるのか、一部だけ抜けるのか、詳しく教えてください。

あと、当医院での手術費用は安い方なんでしょうか?

当院からの返信です。

〇〇様

お問い合わせ頂きありがとうございます。
松島皮膚科医院の松島弘典です。

ご質問の「陰嚢被角血管腫のレーザー治療後に生じる脱色素斑」について回答いたします。

「詳しく」とご希望なので、そのようにご説明します。

いわゆる脱色素斑という状態は、皮膚の3層構造(表皮、真皮、脂肪組織)のうちの表皮に問題があり発症するトラブルです。黄色人種における正常皮膚では、表皮内の色素細胞が角化細胞へ適度なメラニン色素を供給し続けているために、正常な皮膚色を維持することができています。脱色素斑は表皮へのダメージ(病気、炎症、外傷など)により色素細胞が傷つき、色素を産生・供給できなくなるために生じます。

次に「陰嚢被角血管腫の病態」です。本疾患は真皮内の血管が異常に増殖・拡張し、赤〜紫調の小隆起を呈しています。従いまして、陰嚢被角血管腫とは表皮内ではなく、「真皮内のトラブル」であることを覚えておいて頂ければと思います。

最後に陰嚢被角血管腫に対するレーザー治療についてです。本疾患に対して使用される主な医療レーザー機器は、「ロングパルスYAGレーザー(Long-YAG)」、もしくは「炭酸ガスレーザー(CO2)」です。Long-YAGは血管のみに反応させることができるので、「陰嚢被角血管腫として異常に増殖・拡張した真皮内血管のみ」を破壊し、表皮は温存することができます。それに対して、CO2は皮膚内の水分に反応し照射部位を蒸散させるため(イメージとしては皮膚を表面から順に削っていく感じです)、陰嚢被角血管腫に対して照射した場合、まず表皮を全て欠損させ、次に病気の本体である真皮内血管を蒸散させます。つまりCO2では病変部分の表皮が必ず損傷を受けることとなります。

ここで本題の「陰嚢被角血管腫のレーザー治療後に生じる脱色素斑」に戻ります。ここまでお読み頂いて、脱色素斑の発症は表皮へのダメージの有無と密接に関係していること、陰嚢被角血管腫の治療においてLong-YAGでは表皮へのダメージがほとんどないこと、CO2では必発であることはお分かり頂けたかと思われます。つまり脱色素斑の発症リスクはLong-YAGでは非常に低く、CO2では高くなる可能性があるということです。

当院では専らLong-YAGにて治療を行っているため、陰嚢被角血管腫のレーザー治療後に生じる脱色素斑はほとんどありません。「ほとんど」と表現しているのは、大型の病変にレーザー照射した場合、発生する熱量も比例して大きくなるため、二次的に発生した熱エネルギーが表皮を内側(真皮側)から傷つける場合が稀にあるためです。そのような部分は一時的に脱色素斑を生じますが、経過観察をしていくと、時間とともに色素が回復してきていますので、最終的には問題となることはありませんでした。従いまして、「Long-YAGでの治療経験上、脱色素斑のリスクはほぼない」と私は考えています。

「陰嚢がパンダみたいになる」とおっしゃられた先生が、どのような医療レーザー機器を使用されているのかは存じあげませんが、もしかしたらCO2にて表皮・真皮共に蒸散されているのかも知れません。

最後に治療費用についてですが、陰嚢被角血管腫のレーザー治療は自費診療となるため、各医療機関が独自に料金設定をしています。適正な価格帯というものが存在しませんので、何とも評価しにくいところがあります。私の個人的な見解としてですが、治療にかかる時間、薬剤、および医療機器の購入費用を考慮すると、当院における現在の費用設定は「やや低い」と考えているため、時期は不明ですが、今後適正な設定に変更していこうかと思っています。

治療のご希望がございましたら、ぜひ一度ご来院ください。

初診としてご来院されると思いますので、下記ページもご参照ください。
初めて受診される方へ

回答は以上となります。
ご検討ください。

なお、今後の来院・受付に関する事務的なご質問は、下記までお電話にてお問い合わせください。
Tel:043-423-3552

どうぞ宜しくお願いします。



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