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アトピーによる色素沈着にレーザー治療は可能ですか?



患者様よりお問い合わせを頂きました。

幼少期にアトピー性皮膚炎でステロイド剤を使用していました。現在アトピーの症状は背中に時々かゆみがあるくらいです。

今回、治療したいのは首(全体)、腕(外側)、背中(上部)にある色素沈着です。黒ずんでいてとてもコンプレックスです。夏は人の目がとても気になります。

特に首はさざ波様色素沈着でここ数年でひどくなっています。

以前は近くの皮膚科に相談した事がありましたがビタミンcの内服薬だけで変化はありませんでした。

レーザーで治療可能でしょうか?

当院からの返信です。

〇〇様

お問い合わせ頂きありがとうございます。
松島皮膚科医院の松島弘典です。

ご質問の「アトピー性皮膚炎(AD)により生じた炎症後色素沈着(PIH)のレーザー治療」について回答いたします。

PIH治療には原疾患(ご自身の場合はAD)の高度なコントロールが必須となりますが、「現在アトピーの症状は背中に時々かゆみがあるくらい」とのことなので、この点につきましては問題ないかと思われます。しかしながら、診察の結果、炎症所見があることが確認された場合は、ステロイド外用剤、もしくは非ステロイド外用剤(プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏など)による長期的なコントロールが必要となる場合もあります。

本題のPIHに対するレーザー治療ですが、当院ではPIHの程度によって2種類のレーザー機器を使い分けています。1つはQスイッチYAGレーザー(Q-YAG)、もう1つはQスイッチアレキサンドライトレーザー(Q-ALEX)です。

Q-YAGはいわゆる「レーザートーニング」という低出力設定で、4〜8パス(=2〜4往復)照射する治療方法です。1回あたりに改善することのできるPIHはわずかで、複数回(10〜30回程度)施術することが前提となる治療方法です。元々PIHに対しては強いレーザー治療は禁忌とされているため、このような治療方法が編み出されたという経緯があります(PIHに対する強いレーザー治療は活発に活動している色素細胞を破壊し、逆に脱色素斑を作り出してしまう危険性があるため)。

当院ではPIHに対しては基本的に「Q-YAGによるレーザートーニング」を行っています。ADによるものであれば、色調が薄くて比較的均一なPIHには良い適応と考えています。

しかしながら、PIHが重度の場合、すなわち「ダーティーネック」や「さざ波様PIH」と称される様なケースにおいては、「Q-YAGによるレーザートーニング」は中々成果につながりません。1回ずつレーザートーニングを行う度に、相応量のPIHは除去されていくのですが、色調があまりに濃いため、肉眼的に効果として実感できないという状況となってしまいます。

従いまして、「ダーティーネック」や「さざ波様PIH」の場合は、Q-ALEXによる「通常出力によるレーザー治療」を行います。前述の脱色素斑となる可能性もありますが、そのくらい強力なレーザー治療でなければ効果が期待しにくいからです。

ADに限らず、PIHとは基本的に「原疾患の治療」と「美白剤の内服&外用」を併用しながら、「時間経過による自然回復」が期待できる病態です。紫外線を浴びて皮膚炎となりPIHを生じても、冬になり紫外線の影響がなくなれば自然と色調は薄くなるという現象が代表例です。

「自然回復するはずのものがそうならない」というのは手強いPIHであり、治療自体が難しく、またリスクを伴うものです。老人性色素斑に対するレーザー治療の様に、「治療前にその経過がほぼ予測できる」という類の治療とは異なります。

ADにより生じた難治性PIHに対する治療は、症状の重症度、ご希望の治療ゴール、かけることのできる治療期間と費用を総合的に判断することが必要となります。

宜しければ一度ご来院ください。
AD、PIHを診察させて頂き、治療についてより具体的に説明致します。

回答は以上となります。
ご検討ください。

なお、今後の来院・受付に関する事務的なご質問は、下記までお電話にてお問い合わせください。
Tel:043-423-3552

どうぞ宜しくお願いします。



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