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【院内勉強会】ルパフィン 抗PAF作用と増量方法



今月の上旬に田辺三菱製薬(株)さんによる「ルパフィン錠10mg 院内勉強会2018」を開催しました。

【院内勉強会】ルパフィン2018

ルパフィン錠の勉強会は今回で2回目です。初回の内容は過去記事をご参照ください。
抗PAF作用が新しい! 新規抗アレ剤・ルパフィン錠(2017.10.3)

ルパフィン錠のユニークな特徴は抗PAF作用を有している点です。PAFとは「platelet-activating factor(血小板活性化因子)」の略で、様々な病態における重要なケミカルメディエーターと考えられています。

前回の勉強会ではルパフィン錠が抗ヒスタミン作用のみならず抗PAF作用も有しているとの説明がありましたが、PAFが皮膚科的疾患にどのように関わって来ているのかについて詳しい解説はありませんでした。あれから数ヶ月が経ち、メーカーのパンフレットにもPAFについての情報がしっかりと記載されるようになっています。下図はパンフレットからの引用です。

【院内勉強会】ルパフィン2018-2

アレルギー反応には抗原(アレルギーの原因物質)が体内に入って来てからすぐに始まる「即時相反応」と、数時間経過してから始まる「遅発相反応」があります。図を見ていただくと分かりますが、マスト細胞から放出されたヒスタミンは即時相反応を引き起こし、PAFは即時相・遅発相反応の両者を引き起こします。その結果、鼻アレルギーでは「くしゃみ、鼻漏、鼻閉、夜間鼻閉」が現れ、蕁麻疹では「かゆみ、紅斑、膨疹」を呈することとなります。

これまでの抗アレルギー薬の主な作用は抗ヒスタミン作用であり、蕁麻疹においても「どのようにヒスタミンを抑えるか」に治療の主眼が置かれて来ました。しかしルパフィン錠の登場以来、PAFが蕁麻疹などにも関わっていることが注目され、ルパフィン錠の抗PAF作用によってその反応を抑制することができるようにもなりました。これは皮膚科治療における前進です。

慢性蕁麻疹の場合、特に抗アレルギー薬の効き目が重要となります。既存の抗アレルギー薬で病状のコントロールがうまくいかない場合、ルパフィン錠は新たな選択肢となりうるものと考えられます。

次はルパフィン錠の増量方法についてです。添付文書には「通常、12歳以上の小児及び成人にはルパタジンとして1回10mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて、ルパタジンとして1回20mgに増量できる。」とあります。これは病気の改善が思わしくない場合、「医師の判断でルパフィン錠を2倍量まで増やすことができる」という厚労省からの指示です。

他の抗アレルギー薬の添付文書には、基本的に「年齢、症状により適宜増減する(増量は一般的には2倍までという解釈)」と書かれているだけであり、ルパフィン錠のように「1回」と回数が指定されている薬剤は珍しいです。

これは恐らくルパフィン錠の「血中半減期(t1/2)」が関係していると思われます。ルパフィン錠のそれは「20.7時間」と非常に長いため、朝晩の2回ではなく、1日1回が適切と判断されたのでしょう。増量可能な他の抗アレルギー薬(1日1回1錠タイプ)と比較してみると、ずば抜けて長いことが分かります。

【ルパフィン錠10mg(ルパタジン)】
・デスロラタジン t1/2(hr) 20.7

通常、12歳以上の小児及び成人にはルパタジンとして1回10mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて、ルパタジンとして1回20mgに増量できる。

【ザイサル錠5mg(レボセチリジン)】
・レボセチリジン t1/2(hr) 7.3
通常、成人にはレボセチリジン塩酸塩として1回5mgを1日1回、就寝前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高投与量は1日10mgとする。

【アレジオン錠20mg(エピナスチン)】
・エピナスチン t1/2(hr) 9.2
通常、成人にはエピナスチン塩酸塩として1回20mgを1日1回経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。

【クラリチン錠10mg(ロラタジン)】
・活性代謝物(DCL)t1/2(hr) 14.5
成人:通常、ロラタジンとして1回10mgを1日1回、食後に経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

【エバステル錠10mg(エバスチン)】
・活性代謝物カレバスチン t1/2(hr) 18.5
通常、成人には、エバスチンとして1回5〜10mgを1日1回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

私自身は1日1回1錠の抗アレルギー薬を増量する場合、体内での薬物血中濃度を高いレベルで維持させたいので「1日2回(朝・晩)」としていましたが、ルパフィン錠の場合はきちんと1日1回で処方したいと思います。



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